これは余談ですが、オレが留置所にぶち込まれたとき、オウム信者が独房に入ってきました。なんでもサティアンから脱走しようとした信者を監禁するコンテナの監視人をしていた人物ということでした。朝の運動時間は全留置人がいっしょになるんだけれど、ヤクザですら気味悪がってオウム信者には近づかない。しかし、オレは好奇心が旺盛なので、積極的に寄っていっていろいろ面白い話しを聞くことができました。
五十歳を超えたおっさんだったんだけど、夫婦で出家したそうです。ところが熱湯の中に長時間つかるという無茶な修行をやらされて、奥さんは死亡してしまいます。死亡届は出さず、死体を巨大な電子レンジみたいなもので焼却し、わずかに残った骨は硝酸で溶かして消滅させてしまったとのことでした。オウムに殺されたようなものですよね。後悔していないのかときいたら、「かたちが変わっただけなんです」と本気でこたえてきました。さすがにこういう人を目の前にすると衝撃で、何ともいえない暗い気分になりましたね。事件化されていないだけで、オウム真理教内部で文字通り消された信者は、たぶん数十人単位でいるのでしょう。
さらに余談だけど、オウム真理教事件の時は、社会党の村山富市が首相の自社連立内閣でした。ネットでは、ウヨに危機管理がまるでできなかった無能内閣のようにいわれていますが、そんなことはなかった。
オウム真理教事件で村山首相が一番気にかけたのは、オウム施設内でどうなっているかわからない子供たちのことでした。首相直々の命令で、オウム施設内に機動隊を突入させ数十人の子供たちを救出させています。子供を大切にするのは、日本人の最大の美徳のひとつだと思います。しかし、オウム信者だからという理由で親から子供を分捕ってよいという法律はありません。だからこれは決断に相当な覚悟が必要な超法規的な行動といっていいでしょう。ウヨ的な危機管理だったら、「オウムを壊滅させろー、法律を無視してでも一人残らず逮捕しろー」となるところが、社会党的危機管理だと、「オウム施設にいる子供たちが心配だー、法律を無視してでも一人残らず救出しろー」になるわけです。
オウム真理教は、『警察が子供を拉致』なーんていうビデオを出して(オレは今も持っているぞ)抗議キャンペーンをしていましたが、お前らは修行して宿縁を遮断するんじゃなかったのかよと、ちょっとツッコミたくなりましたね。一九九五年は、阪神大震災もあり、前代未聞の事件が立て続けに起こった年でした。自民党政権だったとしても、あれ以上の対応は無理だったと思うよ。
- 遊撃インターネット雑記76 (via kanose)