彼らは2000年に東芝がおこなった発表に注目した。「近いうちに,1.8インチのハードディスクに5ギガバイトを記憶できるようになります」。それはどのくらいの記憶容量だろうか。トランプのカードよりも小さなドライブに音楽が1000曲納められるくらいだ。そこでアップル社は単純にそのテクノロジーを製品化して発売した。すると,供給はみずからの需要をつくり出した。消費者は自分の音楽ライブラリを持ち歩くことなど考えてもみなかったが,いざそれができるとなったら,たちまちその便利さを理解した。すべての音楽を持っていれば,今日は何を聴こうかといちいち用意する必要はなくなるのだ。
クリス・アンダーソン 高橋則明(訳) (2009). フリー:<無料>からお金を生み出す新戦略 日本放送出版協会 pp.121-122”
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I’m Standing on the Shoulders of Giants. iPodの意義 (via atorioum)
あぁそうそう、これこれ。
最近dsbdに佐藤一郎さんって方だったかの電子書籍に関する文章のquoteが流れてるけど、その中に「iPadは電子書籍のサービスが整った状態で出荷されてるから強くて、シャープのガラパゴスはハードは有るがサービスがなくてこれからだ」的な話があった気がしてて。
「でもそれって変じゃね? だって初代iPhoneはAppStoreができる前に発売されて好調に売れたし、iPodだってiTMSの前だし。最近のAppleはサービス環境の整備なんて待たないと思うんだけど… んー…」ってボンヤリ考えてたんだけど。
答えがここにあったわ。
「テクノロジーの声を聞く」、ね。
(via vmconverter)
これは単純比較が難しいと思います。既にこのことについて論じた本などもあるでしょうけど、自分のメモ代わりに書いておきます。
iPod発売はmac専用の第1世代が出たのは2001年、Windowsでも使えるようになった第2世代が出たのは2002 年、ですが、それ以前の1999年1月に公開されていたのがnapsterです。ちなみにWinMXは2001年、winnyは2002年(作者逮捕時の最新版でも2003年11月)。音楽の場合、合法非合法かは置いておくとして、音楽を入手するためのプラットフォームはiPodが登場する前、 iTunesが登場する前に存在していました。これは圧縮フォーマットmp3の功罪、とも言えるかもしれませんし、レコードからCD、アナログからデジタルに移行した時点で決まっていた運命なのかもしれません。CDの生産が始まったのは1982年です。
書籍についても、版権が切れているものについては日本では青空文庫、海外ではProject Gutenbergがありますが、napsterが実現したような、「現在流通している音楽ソフトを無料で入手するためのプラットフォーム」はありませんでした(厳密には「無い」、とは言えませんが、誰でも簡単に使える、という意味においては存在しないも同等です)。書籍の世界には音楽の世界におけるmp3のような変化は無かったし、そもそもそれ以前にレコードからCDへ、という変化もありませんでした。
音楽メディアはiPod以前にレコードからCD、というアナログ→デジタルの時代を経ています。しかし、書籍の場合はこのアナログ→デジタルのフェーズをほとんど体験しないでデジタルの世界に移行しようとしていて、だから書籍の世界におけるnapsterのようなプラットフォームも、mp3のような便利な圧縮規格も無い状態で事業を開始する必要がありました。
書籍なら、インターネットが一般化した時に既に文書データだってデジタル化して流通しているじゃないか、という見解もありますが、一度に大量の文字情報を一括して閲覧するには、パソコンではなく、軽くて薄くて持ち運びが便利で稼働時間が長く、目にも優しい筐体の登場が必要でした。
(via pdl2h)