“世間ではセンター試験が開催されていますね。
ここで数年前の私がみかけた話をひとつ。 ちょうど十年前のセンター試験の日のできごと。
当時の私は、田んぼに雪が降り積もっているとある田舎町に住んでいた。
あたりは見渡す限りの山に囲まれていて、高層ビルなんかも見当たるわけがない。
私はいつも始発の電車で仕事場に向かっていた。 その日もいつものように始発に乗っていたところ、急に電車が停車した。
なんでも、吹雪の影響で電車がこれ以上進むには危険だそうだ。
そのアナウンスを聞いて、乗っていた一人の女子高生が騒いでいる。
携帯電話でどこかにかけていたが、切るとすぐに青ざめた表情になった。
30代くらいの会社員らしき男性が「どうしたの?」と声をかけると、
「センター試験まで間に合わなくなっちゃったんです」と、
涙ながらにこぼした。
電車は動く気配もないし、こんな朝っぱらから通っている車もない。
会場のある隣町までは、この電車でぎりぎり着くかどうか、というところであった。
私は手の打ちどころがないと思っていたら、その会社員が無言で携帯電話を取り出して、
どこかに電話をかけた。
話し終わったら、女子高生へこう告げた。
「今、家内に事情を話したら今すぐ来てくれるそうだ。五分もあれば迎えが来て、
会場まですっ飛ばしてくれるだろう」 彼女は泣きながら会社員にお礼を言った。
そうして数分後に迎えが来て、運転手さんに事情を話しておろしてもらい、
会場へとのせてもらっていた。 終始女子高生は会社員にお礼を言ったが、会社員は
「お礼を言う暇があったら、勉強しておきなさい」
と言うほど冷静であった。 それから毎年この時期が近付くとこのことを思いだすけど、
今まで生きていた中で一度もあの人ほど「紳士」という言葉に
似合っている男性は見たことがない。”
- センター試験 続・妄想的日常 (via maconn)
ここで数年前の私がみかけた話をひとつ。 ちょうど十年前のセンター試験の日のできごと。
当時の私は、田んぼに雪が降り積もっているとある田舎町に住んでいた。
あたりは見渡す限りの山に囲まれていて、高層ビルなんかも見当たるわけがない。
私はいつも始発の電車で仕事場に向かっていた。 その日もいつものように始発に乗っていたところ、急に電車が停車した。
なんでも、吹雪の影響で電車がこれ以上進むには危険だそうだ。
そのアナウンスを聞いて、乗っていた一人の女子高生が騒いでいる。
携帯電話でどこかにかけていたが、切るとすぐに青ざめた表情になった。
30代くらいの会社員らしき男性が「どうしたの?」と声をかけると、
「センター試験まで間に合わなくなっちゃったんです」と、
涙ながらにこぼした。
電車は動く気配もないし、こんな朝っぱらから通っている車もない。
会場のある隣町までは、この電車でぎりぎり着くかどうか、というところであった。
私は手の打ちどころがないと思っていたら、その会社員が無言で携帯電話を取り出して、
どこかに電話をかけた。
話し終わったら、女子高生へこう告げた。
「今、家内に事情を話したら今すぐ来てくれるそうだ。五分もあれば迎えが来て、
会場まですっ飛ばしてくれるだろう」 彼女は泣きながら会社員にお礼を言った。
そうして数分後に迎えが来て、運転手さんに事情を話しておろしてもらい、
会場へとのせてもらっていた。 終始女子高生は会社員にお礼を言ったが、会社員は
「お礼を言う暇があったら、勉強しておきなさい」
と言うほど冷静であった。 それから毎年この時期が近付くとこのことを思いだすけど、
今まで生きていた中で一度もあの人ほど「紳士」という言葉に
似合っている男性は見たことがない。”
- センター試験 続・妄想的日常 (via maconn)