“「ニュートリノは本当に超光速粒子だと思いますか?」
だったら面白いなあ、とは思いますが、実際にはまあ無理じゃないかな~と(笑)。
「どうやってニュートリノが光より速いと分かったのですか? 光とニュートリノを競走させたのですか?」
今回のOPERA実験では、ニュートリノはイタリアのグランサッソからスイスのCERNまで、730kmも地中を貫通して飛ばしています(ニュートリノはきわめて透過力の大きい粒子で、地球など楽々と通り抜けます)。同じ距離を光を直線で飛ばそうとしたら、730kmのトンネルを掘らなくてはいけませんが、そんなことは不可能です。
実際は2点間の正確な距離をGPSで求めて、光が2点間を進む時間を計算したのだそうです。 ニュートリノがその距離を飛ぶのに要した時間が、それよりもほんのちょっと速かったということらしいです。
具体的に言うと、光速で飛んできた場合より、60.7±6.9(統計誤差)±7.4(系統誤差)ナノ秒早かったそうです。(1ナノ秒は10億分の1秒です)
これはニュートリノが光より10万分の2.5ほど速い(光速の1.000025倍)ことを意味します。
「1回や2回の測定では誤差ということもあるのでは?」
3年間の1万5000回の反応を分析して得られたデータだそうです。
「GPSの測定ミスなのでは?」
世界各国から頭のいい物理学者が大勢集まってやっている実験なので、そうした単純な原因によるミスならすぐに見つかっているはずです。
「ミスだとしたら原因は何?」
分かりません。
ネット上ではミスの原因をあれこれ推測している人がいるようですが、素人がすぐに思いつくような原因なら、とっくに専門家も気がついているはずです。つまり、ミスがあるとしたら、科学者にも容易には分からないし、ましてや素人には想像もつかないような原因であるはずです。
だから僕は原因の推理はしないことにしています。それは科学者にまかせるべきでしょう。
「科学者は今回の発表をどう受け止めているの?」
おおむね懐疑的なようです。
ただ、早くも、ニュートリノが光より速い理由を説明する理論を発表している科学者も、何人もいるそうです。
たとえば、ニュートリノはこの4次元時空の外側の5次元空間をショートカットしてくるんだ、という理論もあるそうです。
SF作家としては思わず「超空間航法かよ!?」とツッコミを入れてしまいましたけどね(笑)。
「タキオンが光速に近づくとエネルギーが大きくなるというのが分かりません」
この公式をもう一度見てください。
仮に静止質量をiと置いて計算してみると、
v=cの時 m=∞
v=2cの時 m=0.577
v=3cの時 m=0.353
v=4cの時 m=0.258
v=5cの時 m=0.204
v=∞の時 m=0
というように、速度が上がるほど質量(エネルギー)が小さくなることが分かります。タキオンはブレーキをかけようとするとかえって加速してしまうのです。
逆にタキオンを減速させて光速に近づけようとしたらエネルギーが必要です。
「超新星からのニュートリノが4年早く届いているはずだというけど、16万光年で4年ぐらいの誤差は当たり前じゃないのか?」
超新星1987Aの爆発に最初に気づいたのは、南米チリのラスカンパナス天文台に勤めていたイアン・シェルトンです。2月24日に大マゼラン星雲の写真を撮ったところ、前日の写真にはない星が出現していることに気がついたのです。
そのニュースが流れてから、超新星爆発ならニュートリノが出ているはずだというので調べられたところ、23日7時35分35秒に、岐阜県のカミオカンデが11個のニュートリノの反応をとらえていることが判明したのです。
つまり、超新星からのニュートリノは、爆発の光とほぼ同時に地球に届いていたことになります。
(実際は星の中心核で起きた爆発の衝撃波が表面まで及ぶのに何時間もかかるのに対し、ニュートリノはほぼ光速で恒星内部をすり抜けてくるので、ニュートリノが飛び出してきて何時間かしてから明るくなりはじめたはずです)
もしニュートリノが光より10万分の2.5も速いのなら、爆発の光が届く何年も前に地球に届いていたはずです。
「もしニュートリノが超光速なら、タイムマシンはできますか?」
人間が乗ってタイムトラベルする機械を想像しておられるなら、それは無理です。
人間は普通の物質でできている以上、光速を超えられないし、過去には戻れません。
「ワープ航法はできますか?」
上と同じ理由で無理でしょう。
「じゃあ、超光速粒子なんてあっても役に立たないの?」
いいえ、もしタキオンというものがあるなら、それを送ることで過去にメッセージを伝えることぐらいなら、もしかしたらできるかもしれません。
大事故や大災害に関する情報を過去に送って、惨事を回避することもできるでしょう。
まあ、現代の科学ではまだとうてい無理ですけどね。”
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だったら面白いなあ、とは思いますが、実際にはまあ無理じゃないかな~と(笑)。
「どうやってニュートリノが光より速いと分かったのですか? 光とニュートリノを競走させたのですか?」
今回のOPERA実験では、ニュートリノはイタリアのグランサッソからスイスのCERNまで、730kmも地中を貫通して飛ばしています(ニュートリノはきわめて透過力の大きい粒子で、地球など楽々と通り抜けます)。同じ距離を光を直線で飛ばそうとしたら、730kmのトンネルを掘らなくてはいけませんが、そんなことは不可能です。
実際は2点間の正確な距離をGPSで求めて、光が2点間を進む時間を計算したのだそうです。 ニュートリノがその距離を飛ぶのに要した時間が、それよりもほんのちょっと速かったということらしいです。
具体的に言うと、光速で飛んできた場合より、60.7±6.9(統計誤差)±7.4(系統誤差)ナノ秒早かったそうです。(1ナノ秒は10億分の1秒です)
これはニュートリノが光より10万分の2.5ほど速い(光速の1.000025倍)ことを意味します。
「1回や2回の測定では誤差ということもあるのでは?」
3年間の1万5000回の反応を分析して得られたデータだそうです。
「GPSの測定ミスなのでは?」
世界各国から頭のいい物理学者が大勢集まってやっている実験なので、そうした単純な原因によるミスならすぐに見つかっているはずです。
「ミスだとしたら原因は何?」
分かりません。
ネット上ではミスの原因をあれこれ推測している人がいるようですが、素人がすぐに思いつくような原因なら、とっくに専門家も気がついているはずです。つまり、ミスがあるとしたら、科学者にも容易には分からないし、ましてや素人には想像もつかないような原因であるはずです。
だから僕は原因の推理はしないことにしています。それは科学者にまかせるべきでしょう。
「科学者は今回の発表をどう受け止めているの?」
おおむね懐疑的なようです。
ただ、早くも、ニュートリノが光より速い理由を説明する理論を発表している科学者も、何人もいるそうです。
たとえば、ニュートリノはこの4次元時空の外側の5次元空間をショートカットしてくるんだ、という理論もあるそうです。
SF作家としては思わず「超空間航法かよ!?」とツッコミを入れてしまいましたけどね(笑)。
「タキオンが光速に近づくとエネルギーが大きくなるというのが分かりません」
この公式をもう一度見てください。
仮に静止質量をiと置いて計算してみると、
v=cの時 m=∞
v=2cの時 m=0.577
v=3cの時 m=0.353
v=4cの時 m=0.258
v=5cの時 m=0.204
v=∞の時 m=0
というように、速度が上がるほど質量(エネルギー)が小さくなることが分かります。タキオンはブレーキをかけようとするとかえって加速してしまうのです。
逆にタキオンを減速させて光速に近づけようとしたらエネルギーが必要です。
「超新星からのニュートリノが4年早く届いているはずだというけど、16万光年で4年ぐらいの誤差は当たり前じゃないのか?」
超新星1987Aの爆発に最初に気づいたのは、南米チリのラスカンパナス天文台に勤めていたイアン・シェルトンです。2月24日に大マゼラン星雲の写真を撮ったところ、前日の写真にはない星が出現していることに気がついたのです。
そのニュースが流れてから、超新星爆発ならニュートリノが出ているはずだというので調べられたところ、23日7時35分35秒に、岐阜県のカミオカンデが11個のニュートリノの反応をとらえていることが判明したのです。
つまり、超新星からのニュートリノは、爆発の光とほぼ同時に地球に届いていたことになります。
(実際は星の中心核で起きた爆発の衝撃波が表面まで及ぶのに何時間もかかるのに対し、ニュートリノはほぼ光速で恒星内部をすり抜けてくるので、ニュートリノが飛び出してきて何時間かしてから明るくなりはじめたはずです)
もしニュートリノが光より10万分の2.5も速いのなら、爆発の光が届く何年も前に地球に届いていたはずです。
「もしニュートリノが超光速なら、タイムマシンはできますか?」
人間が乗ってタイムトラベルする機械を想像しておられるなら、それは無理です。
人間は普通の物質でできている以上、光速を超えられないし、過去には戻れません。
「ワープ航法はできますか?」
上と同じ理由で無理でしょう。
「じゃあ、超光速粒子なんてあっても役に立たないの?」
いいえ、もしタキオンというものがあるなら、それを送ることで過去にメッセージを伝えることぐらいなら、もしかしたらできるかもしれません。
大事故や大災害に関する情報を過去に送って、惨事を回避することもできるでしょう。
まあ、現代の科学ではまだとうてい無理ですけどね。”
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山本弘のSF秘密基地BLOG:「光より速いニュートリノ」をめぐる誤解・3
これは良いまとめ。
リンク先にはもう何問かQ&Aがあります。
(via tatsukii)