――東京とNYの往復生活をしているわけだけど、NYにない東京の魅力と、逆にどうしようもなく腹の立つことというのは?
JZ 東京は食べ物も美味しいし、ぼくがパクって自分のものにしていくための様々なスタイルの音楽や情報がある。しかし、生活するとなるとどうしようもなく住みにくいんだ。 外国からきて生活している人間を受け入れていくという経験が未熟なせいかもしれないけど、ほんとにひどい。こう言うとすぐに、日本は島国だからという言い訳が必ず出てくる。しかしイギリスも島国だし、マンハッタンだって島なんだ。 人種問題というのはどこの国にもあるものだし、ぼくはユダヤ系で、向こうでもそういう経験がないわけじゃないんだけど、日本の場合にはちょっと違っていて、もっと深刻なんだ。?ガイジン?という不快な言葉を聞くと本当に頭にくる。 この言葉は人間を向こうとこちらに分ける象徴なんだ。ぼくがこっちに来るようになってから6年になるけど、その間にどんどん保守化が進んで、まるでファシズムが台頭しているように感じる、30年代のドイツみたいに。
ここでは本当に基本的な人権といえるようなものが無視されている。ぼくは自分の世代に問題があるのかと思って、もっと若いミュージシャンたちにこの問題を説明したんだが、ガイジンはガイジンなんだからいいじゃないの、 みたいな答が返ってくる。そういう問題が存在することすら考えていない。洗脳がとても深いところまで進んでいるんだ。ニューヨークで黒人の前に行って、ニガーって言ったら、殴られるが撃たれるがするだろうけど、 ここではそんな最低限の相互理解が欠けているんだ。いっしょにプレイするミュージシャンが、ステージから観客に向かって、サックスを吹く?変なガイジン?みたいに紹介したりもするんだからね。それから取材を受けても、 歌謡曲や日本映画が好きな変なガイジンみたいに扱われて、洗脳の材料にされることが頻繁にあるんだ。それに日本のテレビも差別だらけで、とても見ていられない。
だから、ぼくも含めていまこっちに住んでいる人間が、アメリカ人も韓国人も中国人もみんなで、ガイジンと言って何が悪いと思っている問題意識すらない人々にはっきりと問題を提示しなければいけないんだ。 ぼくたちの世代からは、そうしていかなければいけない責任があるんだ。
”- +++ジョン・ゾーン・インタビュー PAGE-2+++